このデータベースについて
アジア太平洋戦争の戦争体験記がどの本のどこに収録されているのかを検索できるデータベースです。部隊や艦船ごとにページを作成し、その部隊・艦船に関わった人の回想の書誌情報をまとめています。
現在、戦争の当事者の視点を知ることは急激に難しくなってきています。戦後八十年近く経ち、公刊戦史をはじめとして多くの戦史研究がなされ、様々な角度からの分析が蓄積されてきました。特に近年は各国の資料がオンラインで公開されつつあることもあり、極めて緻密な考証が可能になっています。一方で、当時その場にいた人々が何を感じ何を考えたかという視点は、これらの資料から直接には読み取れないことが多くあります。その結果、往々にして片手落ちになったり、時として重要な背景を見逃してしまいます。戦争経験者の体験談で分析を補強していくべきですが、すでにインタビューはほとんど絶望的であり、今では彼らが残した体験記や回想録を読み解くことが当事者視点を知るための主要な手段であるといえます。
しかしながら、戦争体験記や回想録の有効活用には多くの課題があります。第一に、体系的に書かれたものではなく、媒体などもさまざまであり、どのような書籍があるのかの全体像が不明であること。存在を認知できない回想録が多数存在します。第二に、タイトルや所属から推測できない回想が大量にあること。転勤時に便乗した船での体験などを狙って探すことは不可能です。第三に、戦後に個人が執筆したことから、記憶違いや保身のための嘘、人間関係への配慮などから、一般に信ぴょう性が低いこと。他の資料や回想との照合を行わなければ、なかなか価値を認めることはできません。
そこで本データベースでは、管理人が読む機会を得た戦争体験記について、部隊や艦船ごとに整理して書誌情報を公開します。辞令を受けて配属された方の回想はもちろん、転勤のために便乗した方や救助された方の回想、さらにはその部隊・艦船で戦死した方の遺族による回想などもできるだけ拾って追加しています。写真資料や解説記事を加えている場合もあります。品質を保証するために、以下の2点をデータベースに組み込む際の条件としています。
①管理人が直接読んだものに限定する。「載っているらしいよ」のレベルでは組み込まない。
②他の資料との最低限の整合性が確かめられた記事のみ追加する。その場に存在しえない船に乗った、などの記事は組み込まない。
データベース化することで、上述の課題を克服し、戦争体験記や回想録によって研究を肉付けすることが容易になると期待しています。戦争体験記の本文が読めるサイトではありませんが、皆さんが興味を持った部隊や艦船に関わった方々の声へ、より簡単にアクセスできるようになれば幸いです。
なお、本データベースは管理人がX(旧Twitter)やブログにて2016年秋から投稿していた文献整理データを出発点としています。ハッシュタグでは文献データの相互リンクなどに限界があること、Xの仕様変更が頻繁で将来性に不安があることなどを理由に2024年3月に本データベースへ移行しました。完全に管理人の趣味で作成しているデータベースであり、内容に関する責任はすべて管理人にあります。また、データベースに対する要望や質問、資料提供のご連絡などがある方は、 お問い合わせフォームからご連絡ください。